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2015年6月19日金曜日

コミュニティ・地域の活性化のための寄付の取り組み(スキーム)

「さっぽろソーシャルビジネス・スクール」にて、札幌市の担当者様から大変に興味深い寄付の仕組みをご紹介いただきました。

この寄付は、「さぽーとほっと基金」といいまして、この基金を通じて、市民が地域やコミュニティの活性化、まちづくりに資する団体に対して寄付をするための仕組みです。
市民や法人などの寄付者が寄付をしたお金は、さぽーとほっと基金にあらかじめ登録した団体へそのまま助成金として支給されます。

≪お金の流れ≫
市民⇒(寄付)⇒さぽーとほっと基金⇒(助成)⇒地域のボランティア団体など

この基金の仕組みでは、寄付者が寄付の相手(団体)を指定することができます。
つまり、寄付者は、あたかも投票のように、候補者(基金への登録団体)の中から寄付先を選ぶことができるのです。
もちろん、もともと寄付者は世界で活動する全ての団体にいかようにも寄付をすることはできるのですが、この寄付の面白いところは、この基金の仕組みを利用して団体指定により寄付をすると、札幌市に対して寄付をしたことになるので、寄付金が、法人が寄付者の場合は指定寄附金として全額損金算入、個人の場合も特定寄付金(地方自治体に対するもの)として、寄付金控除を受けることができるというところです。

税務上の経済的効果としては、、、
実質的にみて、札幌市を介することによって、通常は、全額損金算入や寄付金控除の恩恵に浴することができないはずの地域団体への寄付が、団体への寄付となることを約束されたまま地方自治体への寄付へと付け替えられる、ということになるのです。
(札幌市を介さないで寄付をするよりも税金が安くなり、国の収入はそれだけ減ります。)

もちろん、寄付によって集めたお金を札幌市が助成金として支出する、というのが法形式上の建前ですし、団体への審査により公益性が担保されている、というのが札幌市の主張です。
この仕組みを可能にしているのは、やはり審査が担保する公益性にあるのでしょう。
(これについて、担当者は国からのなんらかの(フォーマルというよりインフォーマルな)関与はなかったとおっしゃっていました。)
しかし、実際上、登録団体への寄付指定はそのま通るのでしょうし、札幌市ではなく寄付者の側の意思がほとんどそのまま反映されている、と言うこともできそうです。
(例えば、指定寄附金や特定寄付金の相手先が法律上かなり絞られていることと考え合わせると面白いでしょう。因みに、税については自治体の立法(条例制定)機能は相当に狭く解されています。寄付金の税務上の扱い権限が国から自治体の手へ?また、自分の息のかかった団体や団体がもたらすベネフィット(フリンジベネフィットや給与も含む)を受ける者が寄付者やそれに近いものの場合はどう考えるべきか?「公共性が市の審査により担保されている」といえるのか?本当に助成といえるのか?などなど、これまでの寄付についての税務上の考え方とはやや距離感がある仕組みです。)
理論的にも、まちづくり施策としても、面白いこのような仕組みは、横浜市や杉並区でも行われているそうです。
札幌市のさぽーとほっと基金については、こちらをご参照ください。

2015年5月13日水曜日

さっぽろソーシャルビジネス・スクールを受講しています。

4月から、札幌学院大学大学院が札幌市から委託を受け開講している「さっぽろソーシャルビジネス・スクール(札幌学院大学・河西邦人教授)」を受講しています。

この講座は、社会的企業やソーシャルビジネスを起業しようとする方や関心がある方に、ソーシャルビジネスの基本概念や事業構想、運営、事例などを学んでもらうために開講されています。
(札幌市からの講座の案内はこちら。)

● ソーシャルビジネスとは?


このソーシャルビジネスというのは、(さまざまな定義付けがあるのですが)河西教授によると「社会課題をビジネスで解決する+他利や公益を増進する持続可能なビジネス+利益を事業へ再投資する(配当しない)」事業をいうそうです。
(また、「社会的弱者が所有、もしくは中心的に行うビジネス」というものも含まれるそうです。河西教授がこのような定義をとるのは、札幌市においてソーシャルビジネスを構想するにあたって広く実施者を募り、地域性などに適合した起業を導くためであるように思われます。)

ソーシャルビジネスとか社会的企業といわれるものを至極単純に言えば、
「社会的な課題(例:高齢者の独居問題)を採算性のあるビジネスによって解決していこう」という事業、ということができます。
(もちろん、非営利性や受益者の効用(社会厚生)を高めるために、配当をしないなどの仕組みをいかに担保するかということも重要なのですが、河西教授も強調なさるように様々な事業者がおり、彼らを広く巻き込んでネットワークを形成していくことはとても大切ですね。)

● ソーシャルビジネス・スクールでの活動(事業構想報告)


さて、現在は、ソーシャルビジネスの基本概念や事業構想の仕方などを学び、受講者が事業の構想をおぼろげながらも(実際にはかなり気恥ずかしいものもありますが)発表し、ディスカッションをし始めたところです。

昨日のゼミでも、興味深い事業構想が発表されました。

例えば、
①高校生が学校の中では学べない職業観や社会性を身に着けられるように、高校生のインターンシップを既存のものの問題(受入先企業の不足)を改善する仕組みづくり、事業化。これは現役の高校教員の方が発表されたもので、教育者ならではの視点を持ちながら他の受講者やパートナーを形成して採算事業としての基盤作りをしていこうということでした。
②障がい者の雇用促進を目的にしながら、障がい者の(職業)生活についての情報を提供するポータルサイトの運営をしていこうという事業などが発表されました。

どの事業構想の発表も、その方ならではの視点と発想を基にした社会課題とその解決法が提示されており、伺っていて、このような事業が本格スタートするためのサポート体制の構築が図れないものかと切に感じました。

今後も、社会的企業とはどのようなものかを、事例などを交えて、できるだけわかりやすく紹介するとともに、ゼミの内容や感想などについても、ブログを通じてお話ししていこうと思います。

2015年2月24日火曜日

執筆した論文が刊行されました。

本日、執筆をした学術論文が刊行されました。
掲載雑誌は、大学の紀要で、札幌学院法学・金山剛教授退職記念号です。

北大法学研究科助教時代に恩師である金山教授から直接に執筆のご依頼を頂戴しました。

 

 戸井健太郎「医療法人の出資持分に関する課税上の問題 ―近時の最高裁判決への検討を通じて」札幌学院法学31巻1号19‐45頁(2014年)

論文内容の詳細は省きますが、
そもそもこのテーマを扱ったのは、(博士論文の一部分の研究の延長として)、営利でもない、非営利でもない法人(=医療法人ら)に対する課税を実務の視点を交えて課税理論として捉えなおしたい(どのように考えるのが実情と理屈に合うのだろうか?)、と思ったからです。
そこで、まず、今回の論文(第一弾、たたき台)では、医療法人の出資持分について、現実に起こっている問題と課税上の問題とを両睨みしつつ、それらの問題の理論上の難しさを明らかにすることに努めました。
営利法人でもない、非営利法人とも言い切れない医療法人に対する課税問題は、(高橋祐介教授の租税法学会での発表を除けば)これまで理論的な面からの検討はほとんどされてきませんでした(他方で、訴訟実務を含む実務的な面からの問題意識や検討は多くなされてきました)。
今回は、理論と実務を架橋したいと目論みましたが、まだ検討の方向性が見えてきたという段階にすぎません。
今後も、営利・非営利の中間領域に位置する法人の研究を進めて参りたいと思います。

最後になりますが、
執筆・寄稿をご依頼いただいた金山剛教授、清水敏行教授、編集でお世話になった田處博之教授、事務局の川村正志様にはこころより感謝申し上げます。
この度は、執筆の貴重な機会を与えてくださいまして、まことにありがとうございました。

2014年12月24日水曜日

医療法人の出資持分あり法人から出資持分なし法人への移行問題(後編)。

前回は、持分の定めのある医療法人から持分の定めのない医療法人への移行が、なぜ最近に取り沙汰されているか、を中心にお話ししました。
今回は、①持分の定めのない医療法人の種類、②移行に必要な手続き、③税法上の取扱いと例外的な取り扱いの紹介(その例外を適用する場合の難しさ)について、簡単に紹介したいと思います。
 

① 持分の定めのない医療法人の種類

持分なしの医療法人は4種類に分かれるとされています。
まず、いわゆる①「通常の持分なし医療法人」、②「基金拠出型医療法人(医療法施行規則30条の37)」、③「社会医療法人(医療法42条の2)」、④「特定医療法人(租税特別措置法67条の2)」です。

通常は、(特に相続のことを考えるのであれば)基金拠出型を選択せずに、また、③④の法人の要件は別途考慮するとして、まずは、①の通常の持分なし医療法人(②から④以外の医療法人)を選択することを考えます。

(社会医療法人というのは、①公益性の高い事業を実施すること、②社会医療法人債を発行できること、③一定の収益事業を行うことができること(公益法人等として収益事業課税なります。参照、法人税法別表第二)、がその特徴とされています。その要件については、医療法42条の2、なかんずく同6号の公的な運営に関する適合要件が重要で、同要件は、医療法施行規則30条の352に明定されています。特定医療法人は、持分の定めのない医療法人のうち、その事業が医療の普及及び向上、社会福祉への貢献その他の公益の増進に著しく寄与し、かつ、公的に運営されていることにつき租税特別措置法施行令39条の251項で定める要件を満たすものとして、国税庁長官の承認を受けたものをいいます。なお、承認後に終了する各事業年度において、法人税率の特例の適用を受けることができます(19%、年800万円以下の部分については15%:協同組合並み課税)。基金拠出型医療法人は、文字通り、基本財産等に対応する部分を出資としてではなく基金として維持している法人のことです。)
 

② 持分の定めのない医療法人への移行に必要な手続き

それでは、何とか病院を残すためにも、持分なしに移行しましょう、と病院の理事会で話し合が持たれたとします。

でも、ここには大きなハードルがあります。
「出資したものを返してもらえなくなるのは困る」という意見が出るのは当然ですよね?
出資したのが10年前でも50年前でもやはり出資したものは返してほしい、というのが当然の意識でしょう。
つまり、全出資者に出資持分を放棄してもらう必要があります。
この放棄の同意を全員から取り付ける必要があります。これは、骨が折れる作業です。
さらに、持分の定款を変更する必要があります。

以下に、移行に必要な作業を簡略に示しておきます。

1) 社員総会決議(医療法48条の37項)・・・通常、3分の2以上の賛成が必要。
・出資持分の放棄、持分なし医療法人への移行の決議
・定款変更決議
⇒出資持分に関する事項について
(退社時に出資額を払い戻さない旨、及び、解散時にも出資額を払い戻さず、解散時の残余財産を国・地方公共団体、財団医療法人、出資持分のない医療法人等に帰属させることを決議する(医療法4425号)。)
⇒役員の定数
(理事6名、監事2名以上とすることを決議し、さらに、その役員のうちに占める親族等の割合を3分の1以下としておく。)

2) 税務署への届出
・「異動事項に関する届出書」の提出
(会計処理としては、同時に出資金(資本金)を資本準備金に振り替える。)

3) 実際の定款変更手続き(都道府県知事への定款等の提出と認可申請⇒認可)
 

③ 持分なし医療法人への移行に際して障碍となる税金の問題

それでは、税金の問題は、どうなのか?
ここが一番気になるところですし、大きな問題となっています。
 
移行時の基本的な税制上の取り扱いについて

【原則:移行時課税】

持分あり法人から持分なし法人へ移行するということは、出資者が持分を放棄するということです。
出資者全員が持分を放棄して持分なし医療法人へと移行すると、放棄した持分の額面とその額面に応じた、法人の含み益部分が出資者から医療法人に贈与されたものとみなされて、医療法人に贈与税課税されることになります(相続税法664項)。

⇒換言すれば、会社の財産を時価評価した時の純資産部分が出資者から医療法人へと贈与されたこととして贈与税を課税されることになります
⇒つまり、持分なし医療法人へ移行すると、法人に贈与税がかかる、ということです。

なお、出資者が純資産部分に対する払戻請求権を放棄したのであれば、法人に(例えば、債務免除益のように、)受贈益が生じ、これに対して法人税が課されるのではないか?とも考えられますが、この点は、立法的措置によって、受贈益として法人税課税がされないことになっています(法人税法施行令136条の4)。

【例外:原則的な贈与税課税の回避(相続税法施行令33条)】

上記の原則的な税制上の取扱い(放棄された純資産部分への贈与税課税)を回避する途が残されています

上記の原則的取扱いは、元々は、財産家が持分のない医療法人や公益法人などに個人の財産を寄付や拠出金として無税で移すことによって、その財産を利用したり、そこから上がる収益を給料としながら、相続税を回避しようとしたため、その対抗策として設けられた規定です。
このような理由により創設された制度のため、そのような税金逃れの目的を有しない法人や出損者(≒出資者)に対しては、持分がない法人に財産を移したからといって直ちに贈与税を課税することがないように、医療法人への贈与税課税を回避させるための立法的措置がさらに設けられました。
その立法的措置の内容は、法人が『一定の条件』に当てはまるときは、上記の贈与税課税を行わないものとする、というものです(相続税法施行令333項)。

・例外規定を適用するための要件

それでは、その例外を適用するための一定の条件とは・・・、
① その運営が適正であり、定款、寄附行為等に、その法人の役員等の数のうちに占める親族等の数の割合が3分の1以下とする定めがあること、
② 法人が、法人に対する財産の贈与者等、設立者、社員、役員又はこれらの者の親族等に、特別の利益を与えないこと、
③ 定款、寄附行為等に、法人が解散した場合の残余財産が国等又は公益社団財団法人その他の公益を目的とする事業を行う法人に帰属する旨の定めがあること、
④ 当該法人につき、法令に違反する事実、帳簿書類に取引を隠ぺいまたは仮装して記録等する事実その他公益に反する事実がないこと
* ただし、運営が適正かどうかについては別途基準があります(下記参照。)。

持分なし医療法人に移行する場合には、上記の原則的な取り扱い(相続税法664項)を例外規定(相続税法施行令33条)により回避する必要がある(つまり『一定の条件』を満たすことが必要!)

・運営適正要件・・・実務家が迷うところ


 「運営が適正」かどうかの要件は、相続税法個別通達(持分の定めのない法人に対して財産の贈与等があった場合の取扱いについて ―(第二 15)その運営組織が適正であるかどうかの判定)に示されています。
 この通達の内容は、それこそ、運営の適正さを担保するための要件となっています(例えば、まず下のチェックリストでまずはチェックしてみると便利です)が、その最後に、「贈与等を受けた法人が行う事業が、原則として、その事業の内容に応じ、その事業を行う地域又は分野において社会的存在として認識される程度の規模を有していること。
 この場合において、例えば、次の事業がその法人の主たる目的として営まれているときは、当該事業は、社会的存在として認識される程度の規模を有しているものとして取り扱う。」という要件があります。

■ その「次の事業」とは・・・

医療法(昭和23年法律第205号)第1条の22項に規定する医療提供施設を設置運営する事業を営む法人で、その事業が次の()及び()の要件又は()の要件を満たすもの

() 医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号)第30条の3521項第1号ホ及び第2((社会医療法人の認定要件))に定める要件(この場合において、同号イの判定に当たっては、介護保険法(平成9年法律第123号)の規定に基づく保険給付に係る収入金額を社会保険診療に係る収入に含めて差し支えないものとして取り扱う。)
() その開設する医療提供施設のうち1以上のものが、その所在地の都道府県が定める医療法第30条の41項に規定する医療計画において同条第2項第2号に規定する医療連携体制に係る医療提供施設として記載及び公示されていること。
・・・(イ)と(ロ)は、社会医療法人の認定要件です。

() その法人が租税特別措置法施行令第39条の251項第1((法人税率の特例の適用を受ける医療法人の要件等))に規定する厚生労働大臣が財務大臣と協議して定める基準を満たすもの
・・・(ハ)は特定医療法人の認定要件です。

つまり・・・、
(イ)、(ロ)の社会医療法人に準じた要件の簡略版、なのです。
ですから、例えば・・・
・社会保険診療等に係る収入金額が全収入金額の80%以上
・自費患者に対する請求方法が社会保険診療と同一
・医業収入が医業費用の150%以内
・役員及び評議員に対する報酬等の支給基準を明示
・病院又は診療所の名称が4疾病5事業に係る医療連携体制を担うものとして医療計画に記載
といったことが、具体的な要件となっています。

(ハ)は特定医療法人に準じた要件の簡略版ですから、
・社会保険診療等に係る収入金額が全収入金額の80%以上
・自費患者に対する請求方法が社会保険診療と同一
・医業収入が医業費用の150%以内
・役職員に対する報酬等が3,600万円以下
40床以上又は救急告示病院
・差額ベッドが全病床数の30%以下
といったことが具体的には要件とされています。
 
そして、ここでよくある解説の間違いとして挙げられるのが、社会医療法人や特定医療法人の要件を満たさなければ、「社会的規模を有する存在として」認められないというものです。
そう読んでしまう気持ちはわかりますが、果たしてそういえるのでしょうか?

ここは、よく読んでください。

「この場合、例えば、次の事業がその法人の主たる目的として営まれているときは、当該事業は、社会的存在として認識される程度の規模を有しているものとして取り扱う。」
つまり、社会医療法人や特定医療法人となるための要件を満たしている場合は、当然に「その事業の内容に応じ、その事業を行う地域又は分野において社会的存在として認識される程度の規模を有している」と認められるということを例示したに過ぎません。
つまり、「これこれの場合に社会的規模を有するものとして認められるのは当たり前だ、その当たり前の例として挙げているに過ぎない」という意味です。
また、「社会的存在として認識される程度の規模」というのは、法律用語でもなんでもないですから、一般論として、判断されるものにすぎないと考えられます。もちろん、このような曖昧な表現が通達にある場合は、(規定振りの良い悪いは別として)実際に移行する場合には、この点については、国税庁等に確認することとなります。
 
------------------
 移行に向けてのまとめ・チェックリスト(簡略版)

1.   医療法人の役員等の数のうちに占める親族等の割合を3分の1以下と定款に定めているか?
2.   法人が解散した場合の残余財産が国等又は公益社団財団法人その他の公益を目的とする事業を行う法人に帰属する旨の定めが定款にあるか?
3.   法人に法令違反等がないか?帳簿が適正か?
4.   法人に対する財産の贈与者、設立者、社員、役員又はこれらの親族に特別の利益を与えていないか?
(役員等には、その地位にあることのみに基づき給与等を支給しないこと)
5.   理事の定数は6人以上、監事の定数は2人以上と定款に定めているか?
(監事には、理事(その親族その他特殊の関係がある者を含む。)及び評議員(その親族その他特殊の関係がある者を含む。)並びにその法人の職員が含まれてはならないこと。また、監事は、相互に親族その他特殊の関係を有しないこと。)
6.   出資持分の出資者(社員)全員による放棄を決議できるか(全員が放棄に同意してくれるか)?

移行を考える際には、まずは、上記の要件について検討してくださいね。
そして、何より、まずは税理士にご相談を!

医療法人の移行問題について、ご質問等がございましたら、この記事のコメント欄か、直接メールにてお問い合わせください。

2014年12月11日木曜日

医療法人の出資持分あり法人から出資持分なし法人への移行問題(前編)。

 最近、医療法人の「出資持分の定めのある医療法人から、出資持分の定めのない医療法人への移行」がクローズアップされています。
(以下では、単に「持分あり医療法人」とか、「持分なし医療法人」ということにします。)

 最近にこの問題が話題となっている理由の一つには、平成26年10月1日から、移行を促進するための税制が適用されることになったことにあります。
(もともと難しい税制なのですが、この税制の適用結果だけをお伝えすれば・・・移行中に持分権者が死亡して相続が開始された場合や、バラバラに持分が放棄された場合にもその時点では課税はせずに猶予して、さらに、最終的に持分なし医療法人に移行した場合には猶予した課税をも免除する、というものです・・・何を言っているのかわかりませんね・・・。)

 もっとも、この移行促進税制の適用を受けるためには、厚労大臣から移行計画の認可決定を受けておく必要があるなど、適用に際してややハードルが高く、それほど使い勝手が良い制度とは言えないようです。
(厚労省も財務省への予算要求書で、年間の適用実績見込みを全国11件としています・・・。)

  • 出資持分のありorなしとは、どういうこと?

戦後昭和20年代に医療法人制度ができたころから、医療法人にはもともと、持分がある医療法人と持分がない医療法人がありました。この持分というのは、出資金の持分のことです。
 出資持分というのは、株式のように、出資した分だけ、全体1000口中の150口というように、各自に持分権が与えられるということを意味しています。持分権があるということは、出資者はいずれ、条件付きながらも、一応、医療法人から出資の払戻しをしてもらえるということです。
他方で、持分なしの場合には、出資者(出損者)は払戻しをしてもらえません。
出資の払い戻しについては医療法人の定款に定めます。

 歴史的な経緯(それも課税上の問題の経緯)や、単純にいつかは出資金を返してもらえる、という私的財産への所有意識から、持分あり医療法人が圧倒的に多く、現在でも大多数は、持分あり医療法人です。
普通は、篤志家でもない限り、なかなか出資額が返ってこないものに寄付をしたりしませんよね。
当然といえば当然です。

  • そもそも、どうして持分なし医療法人への移行が必要なのか?

平成18年の医療法改正により、今後持分あり医療法人は設立できなくなりました。それでは、これが理由?・・・違います。今のところ、持分なし医療法人への移行は法律上、必須ではありません。
・・・やはり、お金の問題です。
 出資者は、医療法人に対し、「医療法人の出資者から抜けるから出資持分を返してくれ」ということができます。もし、出資者が亡くなったら、出資者から出資持分の相続を受けた人たちは、通常、(相続税のこともありますし)その受け継いだ出資持分の分のお金を返してもらうように、医療法人に求めます。
 そうすると、医療法人(病院)は、もちろん、お金を返さなければなりませんが、かつて出資してもらった持分は、いまや土地や建物や高額な医療設備となって稼働しています。
計算上は出資持分(や内部留保)があるのですが、キャッシュという形で返還のために十分に残っていないかもしれません。そうすると、不動産などの資産を売却してお金を返さなければならなくなります。
・・・そうなると病院を続けることはできなくなりますね。
そこで、やはり、持分をなくしてしまった方が良い、ということになるわけです。
あくまで一般論ですが、このようなケースが多いのではないでしょうか。

(次回の投稿に続きます。次回は、税法上の取り扱いについてです。)

2014年10月30日木曜日

北大法学会に出席しました。

10月24日に北大法学会(北大公法研究会共催)で開催れた講演会に出席しました。

講演者は、藤田宙靖前最高裁判所判事(日本学士院会員、東北大学名誉教授)です。
藤田先生は、学者出身の最高裁判事として7年半務められました(藤田先生のお師匠様の田中二郎先生も最高裁判事を務められましたね。)。

講演タイトルは、「司法の使命と役割・学説の使命と役割」です。

藤田先生といえば、『新版 行政法Ⅰ(総論)』や『行政法入門』などの教科書が有名で定評があります。
どちらも素晴らしい教科書です。

藤田先生は、第三小法廷にいらしたので、
行政訴訟では、病院開設中止勧告事件などをはじめとして、
税務訴訟でも、ストックオプション課税事件やオウブンシャホールディング事件などをはじめとして、
多くの訴訟で判事を務められています。

さて、講演内容は、最高裁判所裁判官ご経験者としてのお立場から法学者や法学(学説)の役割をややシニカルにかつ軽妙に述べておられました。
安念教授の論説を引いて、「法律学とは、所詮「暇潰しの芸能」であるにすぎない」というのは強烈でしたが、

「裁判官は、法解釈学説が無くとも、裁判をして行くことができるのであ(る)、・・・・・・しかし、そこで用いられる「法の言葉」において(言葉を換えて言えば、判断が行われる「言語空間」において)、上記に述べたような意味においてより優れた表現を、学者の言説の中に見出すこともまた可能であるであろうし、そこに自らの判断の支えを見出すこともまた可能なはずである。学者は、このような裁判実務における自らの立ち位置を十分に弁えた上で、その言語表現能力を磨くべきであろうし、また、裁判官は、このような表現に接することに努めることによって、その表現の質を上げることを図るべきである。」
と述べておられました。

裁判は、裁判官の良識にかかるものであり、その良識が「法の言葉(法律用語という意味ではない)」によって語られる。その共通言語たる「法の言葉」の質を向上させ、裁判官の眼差しをより豊かなものにするものとして、(「裁判実務と学説」という意味においては、)学説は存在しているのだ、というように受け止めました。
こうした部分が特に印象深かったです。

税務の世界では、まだまだ、「法の言葉」が共通言語たり得ず、「言語空間」が十分には形成されていないように思います。
先人たちが築いてきた「法の言葉」を頼りに税務における法律の素養を養いたいと思います。

(左:北大法学研究棟前。紅葉がきれいです。右:藤田先生のご著書『最高裁回顧録』。)

2014年10月6日月曜日

第43回租税法学会に参加してきました。

関西学院大学で開催された第43回租税法学会に参加してきました。
 
今回は、会場が兵庫県にある、関西学院大学西宮上ヶ原キャンパスということで、千歳空港から伊丹空港までの飛行機を利用しました。
今回は関西学院大学の最寄駅が阪急鉄道甲東園駅ですので、阪急電鉄沿線の宝塚に宿泊しました。(例によって、宝塚でのB級グルメ情報も掲載する予定です。)
 
(右二枚の画像は関西学院大学の美しいキャンパスの様子。まるで外国のようです。)
 

 関西学院大学のキャンパスはとても美しく、木々が豊富に植えられているというのが印象的でした。よく手入れもされているように見受けられます。
 メインストリートには、ヤシの木も植えられていて素敵ですね。
 私もこんな綺麗なキャンパスで学部生生活を送りたかったです。
 
 (左:案内板 右:開始前の様子。)
 
 今年度のテーマは「地方税財政の諸問題」でした。
 今大会のご報告は、
1.慶應義塾大学の吉村典久先生が「地方団体の財政確保に向けての地方税財政改革 ―ドイツにおける地方団体の自主財政主義の模索とその限界―」
2.新潟大学の今本啓介先生が「アメリカ合衆国における自治体破綻法制」
3.一橋大学の吉村政穂先生が「地方企業課税 ―地方間の対立と調和」
4.東北大学の渋谷雅弘先生が「固定資産税の現状と課題」という内容でした(報告順)。
 
 詳しい内容は、後日発刊される『租税法研究』の最新号をご覧いただきたいのですが、特に、今本准教授の自治体破綻時の救済手続きとして慣習法上、債権者が自治体を被告として、「新たな租税の賦課を命ずる職務執行令状の交付請求」ができるという点が興味深かったですね。この点、直接の関係があるのかどうかまだわかりませんが、Clayton Gillette教授は、「倒産裁判所は、増税やサービス削減を含む「資源の調整(resourse adjustment)」を行うべき」と主張しているそうです(今本准教授が紹介されていました)。
 米国法には公法と私法の区別がもちろんなく、自治体についても、我が国とは違って、住民(構成員)の集合体であるという、会社などのほかの団体とやや並列的な捉え方がなされているような印象を受けました。今本准教授の今後の研究に注目です。