2014年12月11日木曜日

医療法人の出資持分あり法人から出資持分なし法人への移行問題(前編)。

 最近、医療法人の「出資持分の定めのある医療法人から、出資持分の定めのない医療法人への移行」がクローズアップされています。
(以下では、単に「持分あり医療法人」とか、「持分なし医療法人」ということにします。)

 最近にこの問題が話題となっている理由の一つには、平成26年10月1日から、移行を促進するための税制が適用されることになったことにあります。
(もともと難しい税制なのですが、この税制の適用結果だけをお伝えすれば・・・移行中に持分権者が死亡して相続が開始された場合や、バラバラに持分が放棄された場合にもその時点では課税はせずに猶予して、さらに、最終的に持分なし医療法人に移行した場合には猶予した課税をも免除する、というものです・・・何を言っているのかわかりませんね・・・。)

 もっとも、この移行促進税制の適用を受けるためには、厚労大臣から移行計画の認可決定を受けておく必要があるなど、適用に際してややハードルが高く、それほど使い勝手が良い制度とは言えないようです。
(厚労省も財務省への予算要求書で、年間の適用実績見込みを全国11件としています・・・。)

  • 出資持分のありorなしとは、どういうこと?

戦後昭和20年代に医療法人制度ができたころから、医療法人にはもともと、持分がある医療法人と持分がない医療法人がありました。この持分というのは、出資金の持分のことです。
 出資持分というのは、株式のように、出資した分だけ、全体1000口中の150口というように、各自に持分権が与えられるということを意味しています。持分権があるということは、出資者はいずれ、条件付きながらも、一応、医療法人から出資の払戻しをしてもらえるということです。
他方で、持分なしの場合には、出資者(出損者)は払戻しをしてもらえません。
出資の払い戻しについては医療法人の定款に定めます。

 歴史的な経緯(それも課税上の問題の経緯)や、単純にいつかは出資金を返してもらえる、という私的財産への所有意識から、持分あり医療法人が圧倒的に多く、現在でも大多数は、持分あり医療法人です。
普通は、篤志家でもない限り、なかなか出資額が返ってこないものに寄付をしたりしませんよね。
当然といえば当然です。

  • そもそも、どうして持分なし医療法人への移行が必要なのか?

平成18年の医療法改正により、今後持分あり医療法人は設立できなくなりました。それでは、これが理由?・・・違います。今のところ、持分なし医療法人への移行は法律上、必須ではありません。
・・・やはり、お金の問題です。
 出資者は、医療法人に対し、「医療法人の出資者から抜けるから出資持分を返してくれ」ということができます。もし、出資者が亡くなったら、出資者から出資持分の相続を受けた人たちは、通常、(相続税のこともありますし)その受け継いだ出資持分の分のお金を返してもらうように、医療法人に求めます。
 そうすると、医療法人(病院)は、もちろん、お金を返さなければなりませんが、かつて出資してもらった持分は、いまや土地や建物や高額な医療設備となって稼働しています。
計算上は出資持分(や内部留保)があるのですが、キャッシュという形で返還のために十分に残っていないかもしれません。そうすると、不動産などの資産を売却してお金を返さなければならなくなります。
・・・そうなると病院を続けることはできなくなりますね。
そこで、やはり、持分をなくしてしまった方が良い、ということになるわけです。
あくまで一般論ですが、このようなケースが多いのではないでしょうか。

(次回の投稿に続きます。次回は、税法上の取り扱いについてです。)

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