2015年6月19日金曜日

コミュニティ・地域の活性化のための寄付の取り組み(スキーム)

「さっぽろソーシャルビジネス・スクール」にて、札幌市の担当者様から大変に興味深い寄付の仕組みをご紹介いただきました。

この寄付は、「さぽーとほっと基金」といいまして、この基金を通じて、市民が地域やコミュニティの活性化、まちづくりに資する団体に対して寄付をするための仕組みです。
市民や法人などの寄付者が寄付をしたお金は、さぽーとほっと基金にあらかじめ登録した団体へそのまま助成金として支給されます。

≪お金の流れ≫
市民⇒(寄付)⇒さぽーとほっと基金⇒(助成)⇒地域のボランティア団体など

この基金の仕組みでは、寄付者が寄付の相手(団体)を指定することができます。
つまり、寄付者は、あたかも投票のように、候補者(基金への登録団体)の中から寄付先を選ぶことができるのです。
もちろん、もともと寄付者は世界で活動する全ての団体にいかようにも寄付をすることはできるのですが、この寄付の面白いところは、この基金の仕組みを利用して団体指定により寄付をすると、札幌市に対して寄付をしたことになるので、寄付金が、法人が寄付者の場合は指定寄附金として全額損金算入、個人の場合も特定寄付金(地方自治体に対するもの)として、寄付金控除を受けることができるというところです。

税務上の経済的効果としては、、、
実質的にみて、札幌市を介することによって、通常は、全額損金算入や寄付金控除の恩恵に浴することができないはずの地域団体への寄付が、団体への寄付となることを約束されたまま地方自治体への寄付へと付け替えられる、ということになるのです。
(札幌市を介さないで寄付をするよりも税金が安くなり、国の収入はそれだけ減ります。)

もちろん、寄付によって集めたお金を札幌市が助成金として支出する、というのが法形式上の建前ですし、団体への審査により公益性が担保されている、というのが札幌市の主張です。
この仕組みを可能にしているのは、やはり審査が担保する公益性にあるのでしょう。
(これについて、担当者は国からのなんらかの(フォーマルというよりインフォーマルな)関与はなかったとおっしゃっていました。)
しかし、実際上、登録団体への寄付指定はそのま通るのでしょうし、札幌市ではなく寄付者の側の意思がほとんどそのまま反映されている、と言うこともできそうです。
(例えば、指定寄附金や特定寄付金の相手先が法律上かなり絞られていることと考え合わせると面白いでしょう。因みに、税については自治体の立法(条例制定)機能は相当に狭く解されています。寄付金の税務上の扱い権限が国から自治体の手へ?また、自分の息のかかった団体や団体がもたらすベネフィット(フリンジベネフィットや給与も含む)を受ける者が寄付者やそれに近いものの場合はどう考えるべきか?「公共性が市の審査により担保されている」といえるのか?本当に助成といえるのか?などなど、これまでの寄付についての税務上の考え方とはやや距離感がある仕組みです。)
理論的にも、まちづくり施策としても、面白いこのような仕組みは、横浜市や杉並区でも行われているそうです。
札幌市のさぽーとほっと基金については、こちらをご参照ください。

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